日本人留学助成
諸外国との交流の促進、諸外国の発展と国際相互理解に寄与する研究を志す海外留学を助成。

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先輩の声

私を変えてくれた留学  立正大学経済学部 専任講師  田中 有紀


友人宅で餃子を作る

私は2007年、東京大学大学院生のときに、留学生に認定して頂き、2008年から2010年に中国・北京大学に留学しました。専門は中国思想史で、儒学における音楽理論を、宋代・明代を中心に研究しています。現在は立正大学にて、自分の専門に関する講義やゼミ、中国語を担当しております。

このホームページを見ている方の中には、「留学に行くかどうかを迷っている方」、そして「留学に行きたいけれど、どのような奨学金で行くかを悩んでいる方」がいると思います。私は「迷っているならばぜひ留学に行くべき」と思います。そして、留学に行くと決めたなら、「ぜひ松下幸之助国際スカラシップに応募してほしい」と思います。
私の研究はフィールドワークをするわけでもなく、また、中国にしかない珍しい史料を使うというわけでもありません。つまり、ずっと日本にいて、机の上で史料に向き合っていることもできました。しかし、私のような研究をしている人こそ、ぜひ留学をしてほしいと思います。
古典を研究している人も、留学して、その国や地域の現在に身を置き、現地の人とふれあうことで、その国や地域特有の物の考え方が少しずつ理解でき、文献を読むときにも、それが大きな助けになることがあります。また、私の場合、現代中国語を身につけることで、漢文の中に息づく中国人独特のリズムを、感じられるようになりました。二年間じっくり現地の大学に通い、同年代の研究者とともに勉強したことで、単なる交流ではない、深いつながり得ることができました。それは「一緒に中国思想研究を背負っていくのだ」という気持ちかもしれません。帰国してから、もう二年以上経ちましたが、その間、留学先の大学の同じ教室で学んだ友達が本を出したり、先生になったり、たまたま国際学会で出会ったり、あるいは今度は向こうが日本に留学に来たり…など、一歩一歩進んでいく様子は、今の私にとって大きな励みになっています。
そのほか留学中は、現地で開催される国際学会に参加したり、中国語論文を執筆したりしました。留学に行く前は、たどたどしい中国語を話し、「研究発表なんてとんでもない!」という私でしたが、留学が始まってからは、まず学内の研究会で発表して、少しずつ慣れていき、最後には国際学会で、中国や外国の研究者に混ざりながら発表できるようになりました。留学中の業績は、助成金や就職など公募の際も、もちろん役に立っていると思いますが、何より、留学中に頑張ったことで、帰国後もそういった機会を頂けることが増えたこと、そして自分自身が、内側に閉じこもらずに、常に国際的な舞台を意識するようになれたことは大きいと思います。


重慶での国際学会

「松下幸之助国際スカラシップ」の良いところは、帰国後も、財団の方々や奨学生同士の交流が続き、スカラシップフォーラムやブックレットなど、研究発表の機会があることです。そこでは、財団の方や出版社の方、それから異分野の研究者である同じ奨学生の方々に、厳しいながらも愛情あふれるアドバイスを頂きます。このような機会を通して私は、「自分の研究を、世の中にどう発信し、どう役立てていくのか」を学びました。いま、大学教員として教壇にたち、話をする相手は、私の専門をほとんど知らない学生たちです。彼らに、自分の研究がどういった意味を持っているのかを伝え、興味を持って聞いてもらうためには、様々な工夫をしなければなりません。また、論文などの指導をする際にも、自分自身が、「自分の研究が、どういうかたちで社会とつながっているのか」を意識できなければ、うまくいきません。
そういった工夫や意識の大切さは、もしスカラシップフォーラムでの経験がなかったら、理解できないままだったでしょう。
博士課程1年のときに、スカラシップの面接を受けて以来、留学中も、その前後も、常に財団の方に見守られていたような気がします。定期的に留学の経過報告を行うことで、自分の中にリズムを作ることができました。毎回必ずしも立派な報告ではありませんでしたが、うまくいかなかったときは励まして頂き、うまくいったときは一緒に喜んでもらえたのも、私にとっては大きな励みでした。

昔の私は、「留学なんて、外国語が得意で、国際交流が好きな人がするものであって、私などは留学には向いていない」と決めつけていました。そのような私が留学を終えて、いま「先輩の声」を書いています。松下幸之助記念財団に感謝したいのは、留学やその後の活動を通して、私自身を広い世界へと羽ばたかせてくれたことだと思います。

(2013年2月)