日本人留学助成〈松下幸之助国際スカラシップ〉

諸外国との交流の促進、諸外国の発展と真の国際相互理解に
寄与する研究を志す海外留学を助成しています。

先輩の声

香港留学と「今のわたし」(2013年2月投稿)

新潟大学経済学部 准教授
岸 保行

私は、2005年度に松下アジアスカラシップ(現・松下幸之助国際スカラシップ)を頂いて中国・香港に留学させていただきました新潟大学の岸保行と申します。香港留学から帰国して早いもので六年の歳月が過ぎました。

第8回松下幸之助国際スカラシップフォーラムにて

今から六年前の留学を振り返ってみると、あの一年間は、「今のわたし」を形成する上で実に意味のある六年間であったことを身に染みて感じております。具体的には、特に以下の三つの観点で意味のある留学であったのではないかと思っております。

一点目は、博士論文を脱稿するための重要な留学であったことです。私の場合には、結果的に留学先でのフィールドワークが博士論文に直接的には結び付かなかったものの、留学先でおこなった「香港に進出した日系企業における参与観察」は、その後の台湾でのフィールドワークの礎となるもので、香港留学で培った「現場の視点から企業の現状を描く」という姿勢を確固として強く意識させてくれたのは、香港での留学でした。

二点目は、留学先との「繋がり」です。香港大学での留学で得た研究者仲間とは、現在でも懇意にさせて頂いており、現在では、香港大学での受け入れ指導教官と「海外の日本企業の実像」に関する英語のブックシリーズを出そうと計画を練っているところです。当時、香港大学で出会った院生の何人かは、既に日本国内や海外の大学で教鞭をとっており、研究活動はもちろんのこと、教育活動でも連携を深めており、香港留学で得た「繋がり」が六年後の教員生活に大いに生きております。

三点目は、香港での留学経験が、その後の研究者への道を大きく拓いてくれたことです。留学から帰国し、台湾でのフィールドワークをおこない博士論文を脱稿し、その後の就職面接の際には「企業を現地・現場の視点から考察することができる」という点を高く評価していただき、2010年4月に東京大学大学院経済学研究科ものづくり経営研究センターに特任助教として採用していただくことができました。その後も、香港留学から得た「現地・現場からの視点」を大切にして研究を継続し、2012年の4月には、新潟大学経済学部に准教授として着任する運びとなり、現在に至っております。

「今のわたし」があるのは、松下アジアスカラシップを受給し香港での貴重な留学経験をさせて頂いたことによるところが大きいのだと確信しております。これから松下幸之助スカラシップを受給して留学する方々も、そして留学から帰って来られた奨学生の方々も、自分の留学経験を信じて、留学先で得る多くの財産を自分のその後のキャリアに積極的に活かしていってください。

末文ながら、このような貴重な留学経験の機会を経済的にそして精神的に支えてくださった松下幸之助記念財団、そして財団職員の方々には衷心より御礼申し上げる次第です。貴財団の今後の益々のご発展を心より祈念いたしております。

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